建築基準法の内装制限とは?対象建築物や仕上げ材料の基準をわかりやすく解説
【この記事でわかること】
- 建築基準法における内装制限の目的と概要
- 内装制限の対象となる4種類の建築物
- 不燃材料・準不燃材料・難燃材料の違いと選び方
- 飲食店や店舗設計で押さえるべき内装制限のポイント
- 内装制限を緩和できる条件
- 専門家に相談するメリット
店舗や飲食店を開業するにあたって、内装のデザインにこだわりたいと考える方は多いでしょう。しかし、内装の仕上げ材料は自由に選べるわけではなく、建築基準法による「内装制限」という規制が設けられています。この制限を理解せずに設計を進めてしまうと、後から仕様変更が必要になったり、確認申請が通らなかったりするケースも少なくありません。ここでは、建築基準法における内装制限について、対象となる建築物や仕上げ材料の基準、緩和条件までわかりやすく解説します。
建築基準法における内装制限とは
内装制限とは、建物の内部で火災が発生した際に、人々が安全に避難できるようにするための規制です。建築基準法第35条の2「特殊建築物等の内装」で定められており、室内の壁や天井の仕上げを燃えにくい材料にすることで、炎の急拡大や有害なガスの発生を抑え、避難経路を確保することを目的としています。
内装制限は単なるルールではなく、建物を利用する人の命を守るための重要な規定です。違反した場合は、建築主や建築士が懲役もしくは罰金のペナルティを受ける可能性があります。店舗設計においては、デザイン性と法令遵守のバランスを取りながら進めることが求められます。
内装制限の対象は壁と天井
内装制限の対象となるのは、室内の壁と天井の仕上げ材料です。床は炎が上に向かって吹き上がる性質を持つため、制限の対象外となっています。また、ドアや窓などの建具も内装制限には含まれません。建具に防火性能が求められるのは、主に防火区画の制限においてです。
壁については、建築基準法令上の内装制限では床から1.2メートル以下の腰壁部分は規制範囲の対象外です。つまり、腰壁より上の部分と天井が制限の対象となるわけです。
ただし、消防法令の内装規制は床面から対象となるため、消防との整合も確認が必要です。店舗デザインを検討する際は、この範囲を意識して素材を選定することがポイントとなります。
内装制限の対象となる4つの建築物
内装制限が適用される建築物は、大きく4つのカテゴリーに分けられます。店舗や飲食店を開業する場合、自分の計画がどのカテゴリーに該当するかを把握しておくことが重要です。
特殊建築物
劇場、映画館、病院、ホテル、共同住宅、飲食店、百貨店、物品販売店舗などが特殊建築物に該当します。飲食店や物販店舗の場合、耐火建築物であれば3階以上の合計が1,000㎡以上、準耐火建築物であれば2階部分が500㎡以上、その他の建築物であれば床面積が200㎡以上で内装制限の対象となります。
特殊建築物の内装制限では、居室の壁・天井に難燃材料以上、通路・階段には準不燃材料以上の使用が求められます。※3階以上に居室がある建築物では、当該用途に供する居室の「天井」について、難燃材料の扱いが除外されるため、天井はより上位(準不燃以上等)の材料が求められます(詳細は用途・規模で判定)。
大規模建築物
建物の階数や床面積が一定規模を超える場合、用途に関わらず内装制限が適用されます。具体的には、階数3以上で延べ面積500㎡超、階数2で延べ面積1,000㎡超、階数1で延べ面積3,000㎡超の建築物が対象です。
大規模建築物では、居室の壁・天井に難燃材料以上、通路・階段には準不燃材料以上が必要となります。学校等の用途に該当する場合や、一定の条件を満たす場合には緩和を受けられる可能性もあります。
火気使用室
ガスコンロを設置するキッチンや厨房など、火を使用する部屋は内装制限の対象となります。住宅や併用住宅の調理室・浴室も含まれますが、階数2以上の建築物における最上階の調理室等は免除されます。
火気使用室では、壁・天井ともに準不燃材料以上の使用が求められます。飲食店の厨房は必ず対象となるため、内装材料の選定には注意が必要です。なお、IHコンロを採用した場合は火気使用室に該当せず、内装制限が免除されます。木材を活かしたデザインにしたい場合は、IHコンロの採用も選択肢となるでしょう。
無窓居室
採光や換気のための窓が十分に確保されていない居室も、内装制限の対象となります。具体的には、床面積が50㎡を超え、天井から80センチ以内にある開口部の面積が居室面積の50分の1未満の居室が該当します。ただし、天井高さが6メートルを超える室は免除されます。
無窓居室では、壁・天井ともに準不燃材料以上の使用が必要です。店舗設計においては、窓の配置や大きさによって内装制限の有無が変わる可能性があることを覚えておくとよいでしょう。
防火材料の種類と性能基準
内装制限をクリアするためには、建築基準法で定められた防火材料を使用する必要があります。防火材料は性能に応じて「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」の3段階に分類されています。
不燃材料の基準と具体例
不燃材料は、加熱開始後20分間、燃焼しない・防火上有害な変形や溶融を生じない・避難上有害な煙やガスを発生しないという要件を満たす材料です。具体的には、コンクリート、瓦、陶磁器質タイル、繊維強化セメント板、ガラス、石、厚さ12ミリ以上の石膏ボード、ロックウールなどが該当します。
不燃材料は最も防火性能が高く、避難階段などの重要な避難経路では不燃材料での仕上げが求められるケースもあります。
参考:国土交通省「不燃材料を定める件(2000年5月30日)」
準不燃材料の基準と具体例
準不燃材料は、加熱開始後10分間、上記の要件を満たす材料です。厚さ9ミリ以上の石膏ボード、厚さ15ミリ以上の木毛セメント板、硬質木片パネル、パルプセメント板などが該当します。
準不燃材料は内装制限において最も多く要求される性能ランクです。通路や階段、火気使用室、無窓居室などで準不燃材料以上が求められる場面は多いため、店舗設計では準不燃材料の選定が重要なポイントとなります。
難燃材料の基準と具体例
難燃材料は、加熱開始後5分間、上記の要件を満たす材料です。厚さ7ミリ以上の石膏ボード、厚さ5.5ミリ以上の難燃合板などが該当します。
難燃材料は3段階の中で最も基準が緩やかですが、居室の壁・天井仕上げでは難燃材料以上が必要となるケースが多くあります。デザインの自由度を高めたい場合は、難燃材料の選択肢を把握しておくとよいでしょう。
店舗設計で押さえるべき内装制限のポイント
飲食店や物販店舗を開業する際には、内装制限に関していくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
自動車車庫は規模に関わらず対象
自動車車庫や自動車修理工場は、規模に関係なくすべてが内装制限の対象となります。店舗に付属するインナーガレージも含まれるため、駐車スペースを設ける計画の場合は注意が必要です。車庫部分は壁・天井ともに準不燃材料以上での仕上げが求められます。
地階にある店舗も対象
地階で飲食店や物品販売店舗として使用する部分は、規模に関わらず内装制限の対象となります。地下に店舗を構える計画では、居室・通路・階段ともに準不燃材料以上での仕上げが必要です。地下空間は避難経路が限られるため、より厳しい基準が設けられています。
2020年の法改正による緩和
2020年の建築基準法改正により、内装制限の一部が緩和されました。一定の条件を満たせば、内装制限が適用される部分でも防火材料を使用しなくてもよい可能性があります。
例えば、(廊下・階段などの避難経路ではない)居室で、床面積が100㎡以内かつ天井の高さが3m以上であり、当該居室以外の部分と間仕切壁または防火設備で区画されている場合は、内装制限が緩和されることがあります(※居室にスプリンクラー設備等を設けた場合は、十分間防火設備で区画する扱いもあります)。
ただし、緩和の条件は複雑で、劇場や病院などの一部の特殊建築物には適用されません。緩和を活用したい場合は、建築士や専門家に相談することをおすすめします。
参考:国土交通省「国土交通省告示第二百五十一号(2020年3月6日)」
内装制限を踏まえた店舗づくりはプロへの相談がおすすめ
内装制限は建築基準法の中でも複雑な規定の一つです。対象となる建築物の判定、使用できる材料の選定、緩和条件の適用など、専門的な知識が求められる場面が多くあります。内装制限を誤解したまま設計を進めてしまうと、確認申請の段階で仕様変更が必要になり、コストや工期に影響が出る恐れがあります。
店舗や飲食店を開業する際には、法令に精通した専門家と一緒に計画を進めることで、デザイン性と法令遵守を両立した空間づくりが実現できます。弊社は一級建築士事務所として、物件探しからオープンまでワンストップでサポートしています。6,000件以上の店舗設計・施工実績を持ち、飲食店や美容院、クリニックなど幅広い業種に対応。内装制限を踏まえた適切な材料選定から、お客様のご要望に沿ったデザイン提案まで、経験豊富なスタッフがサポートいたします。店舗設計でお悩みの方は、お気軽に無料相談させていただきます。
